2021年5月16日に「第5回【公開】マクロビオティクわの会」をZOOMにて開催しました。テーマは「肉食と代替肉について」をマクロビオティックの立場から議論しました。SDGsや環境問題から世界中で肉食についてや代替たんぱく質について注目されており、世界的に代替肉ブームが起きています。今回はグローバルな3名のパネラーが問題提起をし、過去最高の参加者(録画視聴含)86名を集めて開催されました。
■開催日時:2021年5月16日(日)19:30~22:00
■出席者:
パネラー:パトリシオ、ヒメナ・アルバレス、櫻井裕子
ファシリテイター: 高桑智雄
磯貝昌寛、磯貝柚佳里、小島也主子、斉藤武次、桜沢珠紀、千葉芽弓、中島デコ、永井邑なか、長崎希妃子、橋本宙八、村井友子、茂木紀三巴、山口眞利枝、山村慎一郎、吉度ちはる(50音順)
■一般参加者:86名(含、録画視聴)
■ドネーション:105,999円
パネラーの3名のプレゼンテーション
パトリシオ
「より良い世界と環境のために何を食べるか?」
肉食と環境や健康について、グローバルな課題になっている。
現代の食は、もともと世界各国の伝統食に基づくものから、世界的に欧米化し動物性食品・甘いもの・加工食品が増えている。
世界人口も1930年代には約20億人から大きく増加し、80億人に近づいておりまだ増加している。
農業の面からみても、地球の40%を使って食料をつくるために使われているが、そのうちの80%を家畜の餌の生産に使っている。
哺乳類の60%が牛や豚などの家畜で、人間は36%、野生動物はわずか4%、鳥類ではその70%が家畜であり、30%が野鳥である。
家畜の飼育のために多くのエネルギーを使い、木を伐採し、たくさんのCO2を排出している。温室効果ガスの排出や環境負荷は牛や乳製品>豚・羊>鶏>卵>魚の順に大きい。
そのような背景から、動物性から植物性へのシフトが必要に迫られている。
2030年までに変えていかないと地球は持続できない。
肉食は週一程度にすることで、身体にも環境にもやさしい食べ方になる。
今では肉食のもたらす健康や環境に及ぼす問題はたくさんのエビデンスが出ているため、家族や周りの人には、そのエビデンスをもってやさしく、フレンドリーに話をして理解を促すことが大切である。
ヒメナ・アルバレス
「肉食文化の国アルゼンチンのマクロビオティック」
(通訳:村井友子)
アルゼンチンは国民の必要量の10倍の食料生産をしており食料自給率がとても高いが、その一方で貧困が存在している。
食:世界の肉の五大消費国の1つで1年に一人平均100㎏お肉を消費、砂糖は世界10位の消費で動物性と極陰性の両極端。
肉をグリル、フライ、オーブン料理が伝統的で陽性な調理法。方やサラダや砂糖をふんだんにつかったデザート、ワイン、マテ茶、コーヒー、フルーツジュースなど。
病:21世紀はガン、糖尿病、循環器系、神経系の病気が増加。アルゼンチンの糖尿病罹患は10人に一人。
農業:1987年にモンサントが遺伝子組み換えをスタート。2000年にはアルゼンチンの遺伝子組み換え作物生産者がアメリカに次いで世界2位に。
テクノロジー面ではIT化やIHの普及などや医療面でも薬の多用など、環境は大きく変わり、人間が陰性化している。
☆身土不二の考えからも、陰陽のバランスをとり、肉を適量を陰性化した調理法(スープ、煮込み、キャセロール料理)で、多様なたんぱく質をとることが大切である。
なぜなら、、、、
・アルゼンチンにはごぼう、れんこん、山芋、葛生などたんぱく質を含む陽性な根菜類がない。
・陽性な調味料の味噌や醤油や、納豆や豆腐製品なども入手が困難。
・野菜を陽性にする調理法が老け継がれていない。
・アルゼンチン人は遺伝的に動物性に対応している。
【21世紀の人間の在り方】
・脆弱化した肉体と精神、人間の体質や生き方が陰性に変化していくのを食い止め、生命力のある陽性な状態を取り戻す。
・先祖のルーツを尊重しながら進化していくことが必要で、穀菜食主義の再構築を提案する。
アルゼンチンは大豆の生産大国でありそれによる森林破壊が問題になっている。
代替肉を食べるより自然な形で育てられた肉での摂取を提案する。日本は味噌や豆料理をもっと見直すとよいのでは。
櫻井裕子
「代替肉・代替たんぱく質ブームの中で考える食のあり方」
たんぱく質クライシス、持続可能な食肉生産、動物愛護、環境や健康問題を背景に代替肉ブームとなっている。
アメリカのビヨンドミートやインポッシブルフーズなどを筆頭に代替肉市場に続々と参入。
日本でもオーサワやかるなぁ、三育フーズ、マイセンなどの老舗だけでなく、新規参入が続々と増えている。
:植物性代替肉は、
第一世代の豆腐、麩、テンペ、
第二世代のセイタン、コーフー、大豆ミート、マイコプロテイン(Quoon社による菌由来のたんぱく質)
第三世代:新しい肉(肉の分子構造を菜のメゾンスケールで分析し、その構造を植物由来の素材で再構築することで本物の肉に限りなく近づける)
◇大豆ミートの主な製造工程(大豆ミートの研究開発における世界的パイオニアの不二製油による)
脱脂大豆を粉末状に砕いてから水と一緒に押出成型機に入れ高温・高圧をかけて押し出し乾燥させ「粒状大豆たんぱく」を作る。加工の仕方で形状や食感のバラエティを増やし、60種類もの大豆ミート素材を開発。
他、ウルトラ・ソイ・セパレーション製法という豆乳の遠心分離の特許製法でツナやかにかま、ウニ、うなぎの開発がされている。
また、培養肉や代替シーフード、代替卵、二酸化炭素由来のたんぱく質、メタン資化菌由来や藻類のたんぱく質から昆虫食まで様々な代替たんぱく質が開発されている。
【考察】
・ヘルシーと謳った高加工・添加物入りの植物性代替肉の増加
→たんぱく質信仰の疑問とたんぱく質過多、高加工、添加物によるより複雑で治癒の難しい病気の増加が懸念)
・国内大豆自給率は6%、世界の大豆生産増加による環境負荷
・遺伝子組み換え大豆を使用した代替肉の増加
・生命力のない食べ物(培養肉・シーフードなど)が人間に与える影響は?
マクロビオティックの叡智を生かした「肉を食べないライフスタイル」の選択=本当にサスティナブルな生き方の実現を!
■補足:千葉芽弓「代替肉市場の今」
ベジフードプロデューサーとして、ヴィーガンという現場に一番近いところにいる立場で飲食店のプロデュースやメーカーのコンサルや商品開発をする経験から、このt代替肉ブームに危機感を感じている。あらゆる他業種がこの代替肉、フードテック分野に参入、食品添加物や化学メーカーへセミナーをしたこともあり、化学的な肉のようなものの開発がさらに進んでいる。
商品開発をする中で代替肉や加工植物性クリームなどを食べ続けた結果、湿疹なども経験。
・代替肉の世界市場は2020年で2572億円!5年後には約3倍になると予測。
・ヘルシーと謳いファストフードやコンビニなどでも様々な商品が展開。
最近の外食産業では大豆ミートをさらに加工した、生の豚ひき肉形状のものを導入する店が増えている。
一例として・・・
*A社製品
【原材料】食用植物油脂、粒状植物性たん白、粉末状植物性タンパク、香辛料、酵母エキス/増粘剤(メチルセルロース)調味料(アミノ酸等)・色素(ビーツジュースパウダー)
ヴィーガンジャンクフードは中毒性があり、心臓病リスク、肥満、高血圧、勃起不全、認知症リスクを高める!!
AIやテクノロジーに管理され、機能性重視、宇宙食のようなものになっている2050年の未来の食卓を想定されているが(農林水産省によるフードテック官民協議会による)、そんな未来は悲しいではありませんか。
桜沢如一先生の「食養人生読本」に書かれている”自然”であることを第一に考えたい。
「自然を尊敬し、自然を敬い、自然を愛するもののみがこの地上において盛んに栄えることができるのです。
人間を健康に、幸福にするには、できるだけ自然に近い、親しい生活をさせることです。
人間は食物によってのみ生まれ生存し、活動することができるのですから、まず自然な食物をとるように心がけ努力しなくてはなりません。」
ディスカッション、その他
- 動物愛護や食料難への危機感ををきっかけにヴィーガンになる人が多くいて、望診相談を受ける中、ヴィーガンの人達によどんだ空気を感じることがあり、聞くと足りない栄養素を補うためにとサプリメントを多用している人が多かった。
- 完全菜食にすることで問題が起きるケースもある。遺伝子にあった食事を摂る。
- 腸内でたんぱく質を作ることをサポートし、体内再合成の機能を高めることが大切。そのために断食を上手くとりいれる。
- 子育てにおいてのたんぱく質はじめ栄養素が足りるのかという問題は、諸先輩方の子供たちをみて自信をもっている。健康状態に問題はなくしなやかな筋肉を持つ。
- たんぱく源としては伝統的な豆腐、高野豆腐、テンペなどを上手に取り入れる。
- 大豆製品が多すぎるのも問題である。
- 食べることは命をいただくこと、だから合成したものを食べるのはおかしい。
- 京都の完全ストレスフリーで育てられた豚肉をいただいたことがあるが、驚くほどおいしかった。自然に放牧する飼育方法で大きな違いがでる。
- マクロビオティックは正論であるが、どうやって伝えるかが難しい。
- 現代の人たちは肝臓・腎臓機能の衰えでたんぱく質の合成がうまくできていない。
- たんぱく質は穀類にも大いにある、日本人なり自分なりの伝統的な主食を中心に。
- 人間は植物から生まれてくるのだから宇宙の秩序では完全菜食が正しいい食べ方と言っていたが、時代によって変わっていった。環境や状況によって考えて自分の尺度で食べる。
- 自然から学ぶことがすべてである。身土不二や一物全体の考えに立ち返る。自分のからだにあわせながら食べること。そして”おいしいもの”を食べることで心身が満たされて動物性のものをほしいと思わなくなる。素材や発酵調味料のおいしさを生かす。
- 自分の免疫力を信じ、最大限に生かす食べ方・生き方をする。
- 肉食が執着心を生むのだと今日の発表を聞いて改めて感じた。たんぱく質から筋肉が作られるために、運動(家事や労働も同様)が大切。
- 知識や人の意見に振り回されない。許容の心を養う。
まとめ
現代の世界の肉食と代替肉の問題について議論することは、マクロビオティックの思想を深めることでもあり、またマクロビオティックの本質を一般社会に伝えるチャンスでもあります。また、世界の伝統や社会状況によってマクロビオティックも多様化して発展をしている現状も知ることができ、参加者もとても勉強になったとの感想が多かったです。このテーマは、まだま深めることが出来るので、肉食の毒消しや肉食の意義など、今後継続して議論して行きたいと思います。